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れている6)。これらの結果から一般に、高齢者の特徴は、歩幅が狭いこと、床面から足部までの距離が若者に比べて短いこと、着地時に足関節の背屈が低下する傾向のあることなどが明らかにされていた8,11,12)。
また、高齢者の歩行の安全指導の面からの研究も行われ、特に障害物をまたぎ越える際の特徴や、階段の昇り降りに関する研究も報告されるようになった5舳)。これらの報告から、高齢者の歩行を特徴づけるものとして、下肢の筋力の低下および平衡機能の低下によることが幾つかの報告から次第に明らかにされてきた417)。また、障害物歩行について歩行速度や歩幅について調査し、加齢による影響を見た研究3)や障害物の性質の違いによる下肢の運動パターンの研究1)やビデオカメラによる対象物に対する視線の分析に関する研究などもある2)。しかしながら、障害物をまたぎ越えたり、階段を降りたりする際の歩行ストラテジーには、視覚情報によって障害物または階段(階段もある種の障害物と考えている)をどのように認知しているかを明らかにすることは、重要なことであると考えられる。しかし、このような研究報告は調べた限りにおいてはほとんど見当たらない。
そこで、視覚情報の分析のためにアイカメラを用いて歩行動作中にどのような認知特性を有するかについて調査することにした。このたびの調査研究は、アイカメラの装置を装着して歩行動作中の眼球の運動特性および注視点の移動特性等の解析がどの程度可能であるかの試みを行うことに主眼を置いた一したがって、高齢者を対象に調査分析する前の、若者を被検者とした試験的な一調査報告である。

研究方法

1.被検者

今回の実験において広島大学大学院の男子学生1名(年齢25歳)にボランティアで参加してもらった。男子学生は普段は眼鏡を用いているが実験の際には、裸眼で行った。
視力は0.1であったが、今回の測定においてはとくに問題はなかった。

2.測定条件

(1)アイカメラ
アイマークレコーダEMR−7(ナック社)、データプロセスユニットV−714(ナック社)、アイカメラ解析ソフトはEMR−7アイマークデータ(ナック杜)を用いた。
(2)テレビモニター
TRINITRON COLOR MONITOR(SONY社製)横66cm×縦54cm
(3)録画用VTR1
(SONY社製)HandycamCS9アイカメラの映像を記録するために用いた。
(4)録画用VTR2
NV−CX1(Panasonic杜製)アイマーク解析のため録画用VTR1からダビングした。
(5)コンピューター
NEC9821−Xa10アイマークデータの解析その他に使用した。
以上よりコンピューター上でアイカメラ解析ソフトを用いグラフを書き出した。

3.測定手順

被検者には、あらかじめ実験の目的および内容を説明し理解していただいた。
まず始めに、被検者にアイカメラを装着してもらい、位置のキャリブレーションを行った後、障害物をまたぎ越える歩行を行ってもらった。測定場所は体育館の床で、実験に使った歩行路は全長26m、幅1mであった。床質は体操競技に使われる青色のジュータンであった。歩行路の中央付近(15m地点)に高さ21cm、幅64cm、板厚2cmの障害物を1つ設置した。障害物には木製の板を用いた。
障害物を設置した条件で歩く場合では、被検者には「自分の好きなぺ一スで歩いて、障害物をまたぎ越えてください。」とだけ教示した。歩行動作の様子を見るため、斜め後方からビデオカメラでモニターしておいた。
測定区間は障害物を挟んだ約16mで、測定時間は10秒間であった。
アイマークデータの入った映像はいったんハンディタイプのビデオカメラに録画しておき、この

 

 

 

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